海賊団の船出?




「首輪探知機?」 
 帽子の上と下で腕を組み、ふーむうーむと首をかしげる親指姫とフック船長。 
「この真ん中の2つ、私たちですか?」 
「辺りには誰もいないようであるからして、きっとそうではないかと我輩考える」 
 そういって辺りを見回す二人。海岸線の端から端まで見渡しても、人っ子一人見当たらない。 
 足元を蟹が一匹横切っていったが、こんな参加者はいないだろう。 
「でも、これどのぐらいの距離まで判るんでしょう?」 
 再び腕を組んで考える二人。おもむろにフック船長が、むんずと親指姫をつかんだ。 
「きゃ、な、何するんですか」 
「うむ、小小娘をだな、こうポーンと投げて二人の距離が離れればこの機械でも離れる。 
 その距離を測ればいいのである。さすが我輩、実に名案」 
「え、な、ちょ、ちょっと待ってください。何で海のほう向いてるんですかー!!」 

 結局、船長自ら海岸線のランニング開始となった。 

ドタドタドタドタ。 
「どうであるかー小小娘? んー何であるか? さっぱり聞こえないのである」 
バタバタバタバタ。 
「もっと離れてくださいって言ったんです!」 

ドタドタドタドタ。 
「ゼーハー、小小娘、ここでよいであるかー? うむ、ちっちゃくて合図が見えぬ。だが我輩審判、満場一致でOK」 
バタバタバタバタ。 
「ご苦労様です。それで向こうまで何歩かかりました?」 
「お?」 

ドタドタドタドタ。 
「ゼヒーゼヒー、小、小小娘、ここでよいか、よいであるな? ゼヒー、しかし我輩貧弱と思われるのも何か癪。だからして……」 
ルンタッタルンタッタ。 
「……帰りもちゃんと数えないと正確に測れないのに。なんでスキップなんです!!」 
「どひー」 
「んしょ、私の腕の長さが5cmで、あなたの歩幅がえっと1,2……」 
ゼーハー倒れているフック船長の横で、早速計測を始める親指姫。 
「む、腕の長さで計れるとは驚き。船乗りなら一尋、二尋であるが、さしずめ一ピロ、二ピロ?」 
「くだらないこと言ってないで……4、5、休んでてください。 
 7、私、自分で服とか作るから寸法はばっちりです、9,10……」 
「ほうほう、それは感心。料理洗濯家事炊事、やはり女性は家庭的なのが一番。よいお嫁さんになれるのである。 
 ん、どうしたかね。顔を赤くして。……ふーむ、いいかね小小娘。 
 我輩、勘違いはよくないとおも、べ、べべっ、親御さんは人に砂をかけるなとは教えなかったのかね?」 

――それからしばらくして 

「歩幅が5×13で大体65cm、歩数が78と77だったから、えーと大体50mね。 
 それで船長、私と端っこの真ん中で光ってたから……全部で200m? 
 ね、袋の中に地図が入ってたから出してください」 
 袋をガサゴソ漁り、フック船長が地図を引っ張り出す。 
「あ、やっぱり。たぶん200mで正解です」 
「ほう、なぜかね」 
 髭をしごきながら訊ねるフック船長。 
「えっとですね、この地図の縮尺だとこの一枡が200mなんです。私たちが計ったのと同じですよね。 
 こんな酷いゲーム考える人たちですけど、こんなとこまで意味無く意地悪はしないと思うんです。 
 これ、一枡分の中にいる人を教えてくれるんですよ」 
「ほうほう、見事な推理。これは実に便利な機械。 
 ……で、この地図はどこに宝の位置が書いてあるのかね?」 
「……そんなのあるわけないです」 
「それでどうします。これがあれば結構人を避けられますけど」 
 再び、フック船長の帽子によじ登ろうとしながら親指姫が尋ねる。 
「む、待つのである。左腕だと鉤爪を外すボタンを踏んで、転んで、さあ大変。うむ、こちらから登りたまえ」 
 差し出された右腕に飛び移り、結構身軽に肩口までよじ登る親指姫。 
「で、さっきの質問であるが、なぜ人を避けなければいけないのかね?」 
「何故って……だって皆、殺しあえって言われたんですよ」 
「なら、君と我輩も殺しあっていなければいけないだろう。 
 ましてや我輩、海賊。人に言われてホイホイ従えるなら、こんな稼業とっくに出来っこないのである」 
「……そうかもしれません。けど」 
「いいかね、君。我輩、確かに海賊で人を殺したこともある。 
 このゲームの参加者40人。はっ、我輩の殺してきた数はそれ以上であるな。 
 海賊の誇りといいつつ、ゲームのように命のやり取りをしたこともある。 
 だからこそ我輩、利益も誇りも何も無く手を汚すなど、真っ平御免であるな」 
「船長……」 
「おっ、小小娘。我輩を見直したようであるな。うむ、抱き心地はよくなくとも、かまわないのである。 
 さあ、この胸に飛び込んできたまえ。って、飛び蹴りしろといったのではなーい」 

「じゃあ、この道沿いに北に行って、町へ向かうんですね。 
 途中この機械で人を見つけたら、遠くから様子をみてそれから声をかけるですか……。 
 なんだか微妙な選択ですね」 
「微妙、微妙。君は微乳ー。我輩、裁縫はできなくても、その道にかけては百戦錬磨。 
 服の上からでもサイズがわかる。小小娘は上から、イ、イタタッ、そこは駄目っ!」 
 いつに無く手痛い反撃を受けるフック船長。 
「うー、まあ、我輩これでも海賊団の船長。アジトに戻れば八億人の部下たちが……すまん、嘘である」 
 ジト目で見つめる親指姫から目をそらしながらフック船長が続ける。 
「は、八億人は言い過ぎであるが、我輩カリスマたっぷり。実際、部下は100人以上いたのである。 
 まあ、小小娘がいることだし、少し慎重にいくのである。」 
「ふーん、でも海賊なんですよね? 敵もたくさんいたんじゃないですか?」 
 すこし感心しながらも訊ねてくる親指姫に、やっぱり目をそらしながらフック船長は答える。 
「う、うむ。まあ、政府のへなちょこ役人なら我輩の敵ではないのだが、4人ほど厄介な奴らがいるのである。 
 さっきも言った我輩を食いたがる年中食人依存症の馬鹿ワニ、 
 いつもいつも我輩の邪魔をするくそ生意気な小僧っ子のピーターパン、 
 そいつに引っ付いてる羽虫みたいで実にうっとうしいチビ妖精、 
 おまけにピーターパンが好きなどと、おかしいとしかおもえぬインディアン娘 
 こいつらは、この紳士の我輩に向かって、実に酷い悪さを仕掛けてくるのである。」 
「はあ、そうなんですか。でもここにいるのはワニさんだけですよね?」 
「いや、広間でチラッとしか見えなかったが4人ともいたのである。我輩、実に不幸」 
その言葉に親指姫は固まって。 
「…ねえ、船長」 
 なんであるか、と聞き返すフック船長に向かって一言。 
「他の人に出会ったら、絶対乗り換えますから。」 
 捨てないでー、とおどけるフック船長の声を合図に、小さな海賊団が動き出す。 


【J-6/砂浜】 
【フック船長@ピーターパン】 
 [装備]首輪探知機、左手の鈎爪、支給品一式 
 [状態]健康 
【親指姫@親指姫】 
 [装備]コンバットナイフ(人間サイズ)、支給品一式  ※袋を持つのはフック船長 
 [状態]健康 


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